2009/10/08

P&GのマクドナルドCEO講演

ケロッグはジェネラル・マネジメントに焦点を置いているが、「ケロッグといえばマーケティング」との認識は米国のビジネスマンに根強い。逆に「マーケティングに強いMBAは?」と聞けば、十中八九「ケロッグ」という答えが返ってくる。
では、「マーケティングに強い企業は」と聞けば、おそらく、「P&G」との答えが多いだろう。
2009年10月7日に、P&Gのボブ・マクドナルドCEOがケロッグで「バリュー・ベースド・リーダーシップ」と題した講演をした。その要旨は以下のとおり。

「バリュー・ベースド・リーダーシップ」
P&G CEO ボブ・マクドナルド氏

学生がすべきことは、信念(Beliefs)を形作ること。自分の現在と過去を見渡して、文化、経験、教育、家族、組織などから受けた影響により、どのような価値観や信念を持つようになったのか、自分ではっきりと認識する必要がある。リーダーとなれば、ストーリーを語る必要がある。自分の信念や価値を10項目ほどリストアップして、周りの人に正直に伝えることが大事だ。

私の価値観・信念を紹介しよう。
(1) Living a life driven by purpose is more meaningful and rewarding than meandering through life without direction
カレンダーに予定を自分で埋めていくのか、それともカレンダーの予定に縛られて行動するのか。自分の目標をしっかりと書きとめることが大事だ。目標は、職責ではなく、何を達成したいかという行動について考えるべき。書くことで自分に対する制約が生まれる。
例えば、自分の場合は、子供の頃ボーイスカウトで活躍した。社会の役に立つと考えたからだ。ウェストポイント(陸軍士官学校)に入ったもの同じ理由だ。そしてP&Gに入ったもの、同じ目的による。判断基準は、(a)その組織の目的が、自分の目的と一致しているか、(b)価値基準は同じか、(c)そこで働いている人を好きになれるかだ。
P&Gのモットーは、”Touching lives and improving life”で、社員は多くが社外でも、社会貢献活動を行っている。また、P&Gは社員の持ち株率が高く、社員の会社に対するコミットメントが表れている。
ところで、P&Gでは、より具体的な目標として、最近次のような目標を掲げた。
“Touching and improving more consumers lives in more parts of the world more completely”
例えば、P&Gは中国でも最大の消費財企業だ。でも中国では一人当たり3ドルしか需要がない。より多くの製品をより多くの消費者に届けることで、生活の質を向上させて行きたいと考えている。

(2) Everyone wants to succeed and success in contagious
我々は誰かの成功の上にさらに成功を重ねることで飛躍することができる。だから、人の成功には積極的に貢献して行くべきだ。

(3) Putting people in the right jobs is one of the most important jobs of the leader
社員をその適切な仕事に割り振ること。その為に社員一人一人の得意分野を知る必要がある。

(4) Character is the most important trait of a leader
社員一人一人が組織の結果に個人的な責任を持つことが大事だ。また、倫理的である必要もある。特にリーダーは部下の責任も取る姿勢が必要だ。
軍隊では、部下の責任を問われた場合4つの答え方がある。
(a) Yes, sir!
(b) No, sir!
(c) I don’t know, sir!
(d) No excuse, sir!
正解は(d)だ。
また、“Chose the harder right instead of the easier wrong”に従うべきだ。

(5) Diverse groups of people are more innovative than homogenous groups
イノベーションは多様性から生まれる。製品を発明するとき、その需要を予測できる人は少ない。電話は補聴器の発明がきっかけだった。ラジオは船舶無線だった。PCの発明者らはその爆発的な普及を予想できなかった。多様性はネットワークにおけるノードの数と種類であり、そのノードの繋がりから新たなイノベーションが生まれてくる。
人との関係において通常考えるべきことは、”Treat others as you would want to be treated”だが、多様性のある環境では、”Treat others as they want to be treated”と変わるので留意が必要だ。

(6) Ineffective strategies, systems, and culture are bigger barriers to achievement than the talents of people
リーダーが決して行ってはいけないことの中で、陥りやすいことは、不可能な目的を掲げて、社員を働かせることだ。

(7) There will be some people in the organization who will not make it on the journey.
全ての人が目的に向かって歩めるわけではない。立ち止まってしまった人に寛容な姿勢を示すことも必要だ。

(8)Organizations must renew themselves
時代に取り残されないようにするためには、組織は変わっていかなくてはならない。価値と目的を維持したまま、手段を変えていく必要がある。
P&Gについて1980年と今を比べてみよう。
売上:100億ドル;790億ドル
海外売上比率:25%;60%
10億ドル以上の売り上げのあるブランド:0;23
社員数:61,200;135,000
株価:2.32ドル;~56.00ドル

ケロッグでは「どのように学ぶかを学ぶ」べきだ。世界は変わり続けている。リーダーになるためには学ぶ力を持ち続ける必要がある。

(9) Recruiting is top priority
P&Gには、実力主義が根付いている。

(10) The true test of a leader is the performance of the organization when he or she is absent or after he or she departs
私がCEOを引き継いだのは2009年7月1日で、すぐにシンガポール、中国、スイスなどを巡って社員とコミュニケーションした。CEOとしては、第1日から100%の力を出したい。実際には、CEO就任の正式発表の前から、前CEOから仕事を振ってもらい、大部分の引き継ぎを済ませていた。事前に引き継ぎを行うことのリスクは、実際の承認について、役員会が納得しない場合があることだ。しかし、スムーズに引き継ぎを行うことのリターンは各種のリスクを上回る。私はすでに次の候補を探している。

1 件のコメント:

nao さんのコメント...

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And sleep more:-D