2010/05/27

ランチセッション「クリスチャンとして人生の選択に優先順位をつける」

ハリー・クレイマー(Harry M. Kraemer)教授が、昼のセッションで、「クリスチャンとして人生の選択に優先順位をつける」と題して講演した。同教授は、製薬企業バクスター・インターナショナル社(フォーチュン500で185位)の元会長兼CEO。

ポイントは以下のとおり。
・人の多様な価値観を尊重すべき。自分はなにが正しいかを知らない。ただ、強い意見なら沢山持っている
・人生は短く、大義のために生きる。それが目的
・目的がはっきりしていれば、そのための手段はおのずと見えてくる
・日々、自省の時間を設け、自分の目的を確認し、自分の行いがその目的に沿ったものであるか振り返る
・ある人から問題が起こったと聞いたとき、それが本当に驚くに値することなのか、疑問に思うことがある。例えば、子供の巣立ちが予想できたのに、大きな家を買ってしまったなど、大抵予見できる話
・なにも持たずに生まれてきたのだから、なにも持たずに次ぎに進む
・車は型落ちだし、簡素な家に長年住んでいる
・物質的なものにとらわれると、自分がなにを大切にしているのかが見えなくなる
・最終的には自分の主義信条を貫き、そぐわないときは、次に進む。その選択をする力がある
・優先順位を見失わないこと。自分にとっての優先順位は、信仰、家族、社会貢献

***感想***

ケロッグでは、日々、複数のランチセッションが開催されている。
外部講師や学生による、「就職活動必勝法」、「エクセル上達術」といった実践的なもの、企業のトップによる「ルイヴィトンのマーケティング戦略」といった企業戦略に関するもの、教授陣による各分野についての小話など、内容な様々。エンターテイメント性もあり、さながら観劇する演劇を選ぶような楽しさがある。

クレイマー教授の今回の講演テーマは異色で、宗教に根ざす価値観と企業人としての生き方を重ねて見せたものだ。同教授はCFOも務めているが、企業の目的・ゴールが、利益の最大化であるのに対し、同教授の人生の目的・ゴールは、大義のために生きることだという。

同教授は、クリスチャンであることで、目的を持ち、そのための手段を考え、実行し、自省するという、いわゆる人生のPDCAサイクルを実践している。目的を明確化させ、PDCAサイクルに乗せるというのはP&GのCEOが述べていた点とも重なる。
http://duck-dive.blogspot.com/2009/10/p.html

こうした複眼的な観点からビジネスを考えることができるのも、貴重な機会だ。なお、ケロッグの正式名称は「ケロッグ・スクール・オブ・マネジメント」であり、学位はMBAだが、「○○・ビジネス・スクール」といった名称を使っていない。

なお、以下は講演を聴いて疑問に思った点。
・宗教を持たない人はどのように目的を設定すべきか
・クリスチャンとしての価値観と、企業人としての価値観はどの程度合致するか
・平均的な大多数の人は、自分の主義信条を貫き通すことの厳しさを知っているのではないか

2010/05/18

価値基準が優先順位を決める:MBAで学ぶ100のエッセンス(2)

企業の競争優位の源泉は、(1)資源(ヒト、モノ、カネ、情報、技術など)に基づくケーバビリティ、(2)オペレーション、(3)企業の価値基準など。

価値基準は、企業の中の人をまとめるスローガンのように捉えられていて、
競争順位の源泉であると理解されづらい面がある。

価値基準の真価は、優先順位を決めることができる点で、
社員一人一人が、各自独立して、しかし、全体の戦略と整合性のある判断を下せるようになる。

ただ、競争環境の変化が起こり、3つの源泉に変化を起こさなければならないとき、
企業文化にまで昇華してしまった価値基準を変えていくことは、
他の2つの源泉を変えることに比べ難しい。

2010/05/17

ルームメート主演のミニドラマです。ケロッグ1年のA氏が監督・編集したもので、
ジャパン・ナイトで流しました。

http://www.youtube.com/watch?v=T8r8i8YPu4c
http://www.youtube.com/watch?v=pl1yvvQ8QCU
http://www.youtube.com/watch?v=3d9nOhd-M5E
http://www.youtube.com/watch?v=w7Hz9BBGYDs
http://www.youtube.com/watch?v=ZI6auL1_N-k14

ジャパン・ナイトは350人を集めてのショーとなり、大きな成功でした。
「ケロッグで一番のショーだった」というコメントを人づてに聞くと、やって良かったと思います。

以下は、当日のプログラムでした。
*** Program ***
6:00pm Party Begins
6:20 Opening Performances
- Japanese Male Cheerleading
- Cosplay Fashion Show
- Kagami-wari (Opening the barrel ceremony) / Kampai! (toast)
6:50 – 7:10 Professional Taiko Drum Performance
7:10 – 7:40 Karate Performance
8:20 – 8:40 “How Enrique Experienced His Intern in Japan” show.
8:40 Finale Dance by Dancers of 2011

2010/05/13

パーセプションが行動を支配する:MBAで学ぶ100のエッセンス(1)

価値に応じて対価を払う。これは経済の基本である需給バランスの需要曲線を決めるものだ。

だが、この「価値」とは実は極めて主観的な概念だ。
この主観的なものの捉え方をパーセプションという。

「パーセプションが行動を支配する」とは、
その対価としていくら払うかは、消費者のパーセプション次第ということだ。
そして、このパーセプションは、現実にそのもの自体がどうでかあるかに関係しない。
消費者がどのようなパーセプションを持つか、そのパーセプションにどのように影響を及ぼせるかが、
マーケティングの主要な役割だ。

われわれ一人一人がどのようなものの見方をするかで、行動が変わってくる。
行動を起こす主体が個人である以上、個人のパーセプションが究極的には行動を決する。

不可能を可能にすることはできないが、可能なものを不可能と捉えているのであれば、
パーセプションを変えることで、可能性が広がる。

「諦めたら、そこで終わり」

と意識して、自分のパーセプションをチェックし続ける姿勢を維持したいものだ。

シチュー系料理のオペレーション改善

 「健康的な食事」は、留学生活で最も確保の難しいライフライン。食事には、外食、自炊、弁当・テイクアウト、誰かに作ってもらうといったパターンがある。ただ、残念ながら、自分には今のところ誰かに作ってもらうという選択肢はない。

 食事について考えるべき評価軸は、スピード(時間)、健康度、お金、料理の技術の必要性、味として、評価レベルは3段階で、良い順に、○、△、×としてみる。なお「技術」は、自分に料理の技術が必要なくて済むほど評価が高いことにしよう。 

食事の選択肢の評価


 時間のない生活では、相反しやすい「スピード」と「健康」の両立が課題になる。日本のように、ある程度健康的な総菜屋などがあれば、一発解決だ。だけど、米国にはない。

 自分のニーズと食事の選択肢の評価を比べると、スピードを最重視した場合は、弁当・テイクアウトが解になる。ただ、これでは、健康を確保できない。健康がクリティカル・ファクターだとすれば、選択肢は自炊ということになる。問題は、自分のニーズと乖離している、「スピード」と(自分の料理の)「技術」の向上がどれだけ可能か、という点だ。だから、料理のスピードを向上するオペレーション改善は、ライフライン確保のための必須の取り組みなのだ。

 自炊の目的は、野菜を多く使った健康的な料理を作ること。野菜は、炒める、煮る、蒸すなどすることができるが、今回は「煮る」を取り上げ、シチューを作る。

シチューを作るには、次の様なプロセスをたどる。


 このプロセスでは、「煮る・アクを取る」を終えるまでに45分かかる。それ以降のプロセスの料理時間は、電磁調理器を使えば、それほど神経を使って見張る必要はないので、あまり気にする必要はない。

 さて、1食あたりの料理時間は、「1食あたりの料理時間=料理時間÷食数」のように考えることができる。料理時間を変えずに、食数を増やすことができれば時間短縮になる。例えば、シチューであれば、料理時間は1食分でも5食分でもそれほど変わらない。したがって、時間を節約する有効な方法の1つが、1回の料理で大量生産して食数を増やすことだ。

 このようにすれば、例えば5食分作れば、1食あたりの料理時間は、45÷5で9分となり、スピードは、弁当と大体同じ「良」の水準となる(ただし、食材の調達時間は、ここには含まれていない)。だた、そのつもりで、大量に作って、火を入れながら3日ほど常温保存したころ、酸っぱくなってしまった。そこで、常套手段である「小分け冷凍保存」を行うことで、数日に渡って、シチューを食べることができるようになった。

 ただ、この方法では、大量生産した一種類のシチューしか食べることができない。上記のプロセスを辿って、別のシチュー系料理のクリーム・シチュー、ハヤシ・ライス、カレーなどを作ることは可能だが、冷凍庫内のスペースには限りがある。次々に大量に作って在庫を過剰に積み上げることはできない。

 そこで、もう一度、プロセスを確認しよう。各シチュー系料理は、「煮る」までのプロセスを共有している。ここで出来上がっているのは、かなりダシの効いた肉野菜スープだ。ちなみにこのスープは、そのままでも十分においしい。

 この共通プラットフォームに各シチュー系料理の元を加えて行く訳だが、その際に、このスープをより小さな鍋に分けて移し、その時食べたい元を加えれば、好きなシチュー系料理を少量ずつ食べることができる。時間的なコストを抑えたまま、多品種少量生産が可能となる。



 元となる大きな鍋のスープは、分けて煮詰めたシチューに比べかなり水っぽいので、火を継続的に入れても焦げず、保存が利く。あるいは、このスープを少し煮詰めて濃縮して、ボリュームを減らした上で小分けにして冷凍し、解凍時に水を加えて、各種シチューの元と混ぜで煮込む、という方法も採れる。

 このようにして、シチュー系料理におけるスピード、健康、味(バラエティ)、お金などの要素を同時に改善することができる。自分にとっては発見だったが、料理をよく知る人には、当たり前の「生活の知恵」に過ぎないのかもしれない。

セブン・イレブンCEOの講演

セブン・イレブンCEOのジョセフ・デピント(Joseph DePinto)氏が5月13日(木)、
ケロッグで講演した。同CEOはケロッグの卒業生で2005年に同社CEOに就任した。
以下、要旨。

セブン・イレブンは1927年にアイスハウス(製氷店)として発足、
現在世界16カ国に38,000店舗を抱える。
マクドナルドの120カ国、32,000店舗と比べると、
特定の地域に集中して出店していることがわかる。

同社を巡る米国における環境としては、
(1)雇用悪化、(2)人種の多様化、(3)グリーン意識の高まり、(4)健康意識の高まり、(5)付加価値、低価格重視、などがあげられる。
こうした状況に対応すには、まず、顧客視点で考えることから始める。
顧客が考える要素は、(1)品質、(2)サービス、(3) バリュー、(4)清潔さ、(5)品ぞろえ(assortment)。
次に重要なのはフランチャイジーをモチベートすること。

顧客やフランチャイジーを考える際に重要なことは、
CEOを頂点としたヒエラルキーに基づいた発想を転換し、
顧客を最上層に持ってくる必要がある。

また、全社で統一したバリューシステムを浸透させることも必要だ。

健康意識の高まりや規制の強化を受けて、
これまで、利益の大きな部分を占めていたタバコの販売が低下している。
これを補うのがホットフードやコーヒーの販売だ。

また、若年層のコンビニ離れが深刻で、同社では若年層への再浸透を図っている。
クレジットカードを持っていない層へどのように売り込むか工夫が必要だ。

流通面では、卸センターの集約化を図っている。

***感想***
日本のセブンイレブンの店数は約12,000店と米国の約6,000点の2倍。
コンビニという業態のカギを握っているのは、人口密度の高い都市部における利便性の追求にある。
利便性を売り、そのための配送コストをかける、という戦略だ。

人口密度の高い日本においては、ドミナント出店を行うことで顧客にとっての利便性を高めるとともに、
配送コストを抑え、高い収益性を確保している。
一方で、米国は、場合によっては、都市部においても人口密度が日本ほど高くないため、
ドミナント出店を行いづらく、配送コストも高くつく。
市場の特性がコンビニに向いていないと思われる。

一方でウォルマートのような大規模店舗は、人口密度の低い米国に適したモデルであり、
逆に日本市場にはあまり適したものとは言えない。

つまり、利便性や配送コスト、車の利用の頻度など、市場特性に応じて、
適した小売り形態が異なるということ。