「健康的な食事」は、留学生活で最も確保の難しいライフライン。食事には、外食、自炊、弁当・テイクアウト、誰かに作ってもらうといったパターンがある。ただ、残念ながら、自分には今のところ誰かに作ってもらうという選択肢はない。
食事について考えるべき評価軸は、スピード(時間)、健康度、お金、料理の技術の必要性、味として、評価レベルは3段階で、良い順に、○、△、×としてみる。なお「技術」は、自分に料理の技術が必要なくて済むほど評価が高いことにしよう。
食事の選択肢の評価
時間のない生活では、相反しやすい「スピード」と「健康」の両立が課題になる。日本のように、ある程度健康的な総菜屋などがあれば、一発解決だ。だけど、米国にはない。
自分のニーズと食事の選択肢の評価を比べると、スピードを最重視した場合は、弁当・テイクアウトが解になる。ただ、これでは、健康を確保できない。健康がクリティカル・ファクターだとすれば、選択肢は自炊ということになる。問題は、自分のニーズと乖離している、「スピード」と(自分の料理の)「技術」の向上がどれだけ可能か、という点だ。だから、料理のスピードを向上するオペレーション改善は、ライフライン確保のための必須の取り組みなのだ。
自炊の目的は、野菜を多く使った健康的な料理を作ること。野菜は、炒める、煮る、蒸すなどすることができるが、今回は「煮る」を取り上げ、シチューを作る。
シチューを作るには、次の様なプロセスをたどる。
このプロセスでは、「煮る・アクを取る」を終えるまでに45分かかる。それ以降のプロセスの料理時間は、電磁調理器を使えば、それほど神経を使って見張る必要はないので、あまり気にする必要はない。
さて、1食あたりの料理時間は、「1食あたりの料理時間=料理時間÷食数」のように考えることができる。料理時間を変えずに、食数を増やすことができれば時間短縮になる。例えば、シチューであれば、料理時間は1食分でも5食分でもそれほど変わらない。したがって、時間を節約する有効な方法の1つが、1回の料理で大量生産して食数を増やすことだ。
このようにすれば、例えば5食分作れば、1食あたりの料理時間は、45÷5で9分となり、スピードは、弁当と大体同じ「良」の水準となる(ただし、食材の調達時間は、ここには含まれていない)。だた、そのつもりで、大量に作って、火を入れながら3日ほど常温保存したころ、酸っぱくなってしまった。そこで、常套手段である「小分け冷凍保存」を行うことで、数日に渡って、シチューを食べることができるようになった。
ただ、この方法では、大量生産した一種類のシチューしか食べることができない。上記のプロセスを辿って、別のシチュー系料理のクリーム・シチュー、ハヤシ・ライス、カレーなどを作ることは可能だが、冷凍庫内のスペースには限りがある。次々に大量に作って在庫を過剰に積み上げることはできない。
そこで、もう一度、プロセスを確認しよう。各シチュー系料理は、「煮る」までのプロセスを共有している。ここで出来上がっているのは、かなりダシの効いた肉野菜スープだ。ちなみにこのスープは、そのままでも十分においしい。
この共通プラットフォームに各シチュー系料理の元を加えて行く訳だが、その際に、このスープをより小さな鍋に分けて移し、その時食べたい元を加えれば、好きなシチュー系料理を少量ずつ食べることができる。時間的なコストを抑えたまま、多品種少量生産が可能となる。
元となる大きな鍋のスープは、分けて煮詰めたシチューに比べかなり水っぽいので、火を継続的に入れても焦げず、保存が利く。あるいは、このスープを少し煮詰めて濃縮して、ボリュームを減らした上で小分けにして冷凍し、解凍時に水を加えて、各種シチューの元と混ぜで煮込む、という方法も採れる。
このようにして、シチュー系料理におけるスピード、健康、味(バラエティ)、お金などの要素を同時に改善することができる。自分にとっては発見だったが、料理をよく知る人には、当たり前の「生活の知恵」に過ぎないのかもしれない。
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