2009/11/06

有機的な繋がりのある学びとは

ケロッグで学ぶ意義の一つに、「学びが有機的に繋がっている」という点が挙げられる。
本格的に授業が始まって、2カ月未満だが、その片鱗を見たので紹介する。

1.「第一印象」の重要性
誰でも日常の知恵として知っている「第一印象は大事」という、非常にシンプルな概念について、ビジネスの理論、統計的な裏付け、ビジネスの現場、という3つの面から学ぶことができた。「第一印象は大事」だとなんとなく分かっていても、その裏付けを理解することは重要だろう。

(a)リーダーシップ、組織論、交渉術を学ぶ授業で、「アンカリング効果(投錨効果)」という概念を学んだ。例えば、価格が交渉で決まるものについては、始めに提示する価格がインパクトを生んで、その後の交渉に影響を与える。交渉をリードしたければ、先手を打つことが重要な場合が多い。

(b)統計の授業で、「情報カスケード」という概念を学んだ。例えば、不確定な情報しか無い状況下では、先行する人の行動に習ってしまう傾向が強い。身近な例では、見知らぬ町でレストランを選ぶ時に、人が多く入っている店を選ぶことが多い。先行する人の判断が間違っていたとしても、先行する人の行動自体がその後に続く人の判断に影響を与えてしまう。この概念について、確率の計算や統計的なシミュレーションを通して検証した。

(c)ボストン・コンサルティング・グループのランチ・プレゼンテーションにおいて、パートナーが、就職活動を行う学生に対し、面接でインパクトを残すことの重要性を強調した。仕事においても、クライアントに対し、最初に良いインパクトを残すことが重要だという。


2.「正の増幅を生む相互作用」の重要性
行動の効果を高め、結果を最大化するために、人、組織、プロセスのいずれにおいても、プラスの相互作用を生むように調整する必要があることを、チーム、経営戦略、マーケティング戦略の3つの側面から学んだ。

(a)リーダーシップ、組織論、交渉術を学ぶ授業で、強いインパクトを生むチームの条件として、「結束力(Cohesion)」と「スキルの補完性(Complementarity)」のバランスが重要だと学んだ。結束力とスキルの補完性のどちらかに偏重すると、競争が不足したり、激化したりといった問題が生じる。つまり、専門性の高い個々人が、相互に信頼を持って協力する状態が望ましい。

(b)経営戦略の授業で、「調和(Consonance)」という概念を学んだ。例えば、消費財の製造企業が高価格ニッチ市場に向けて製品を販売する場合、企業の強み(コア・コンピタンス)、組織・人事制度、サプライヤーとの関係、企業文化、などが調和し、違いに正の影響を与え合うよう各要素を高価格ニッチ市場向けに調整する必要がある。この調和により、効果と結果を最大化することができ、またこの調和自体が他企業による模倣を難しくし、競合に対する参入障壁となる。また、同授業では、企業買収において、「相乗効果(Synergy)」の有無が買収判断の是非に直結していると学んだ。そして、「調和」と「相乗効果」のいずれの概念も、各要素が正の相互作用を生み、単独の要素よりも大きな結果を生み出すという本質において同じだと学んだ。

(c)マーケティングの授業では、様々なメディアを融合することで、マーケティング効果の最大化を試みる「統合型マーケティングコミュニケーション(Integrated Marketing Communication:IMC)」という概念を学んだ。

このように、ビジネスのカギとなる概念が有機的に繋がっていることを見ることができるのは、学びの理解を深める上で非常に重要だと感じる。

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